危機一髪

しまった、走り過ぎた。速度を出し過ぎたらしい。
危険すぎる。信号は黄色信号で点滅し続ける。
『気をつけろ』
この速さが気持ちよくてアクセルばかり踏んでいたらブレーキが効かなくなってたんだ。点滅する信号。
『気をつけろ』
何とか止まった、だってさ面白いんだよ、他人にはわかんないかなぁこの爽快感が。
ねえところで君は誰?

***

膨大な無意識の海に潜り続けては魚たちと触れ合っていた。
『気をつけろ』
はっ、と気づいたら酸素ボンベの空気はあと少し、見上げてみると海面が遠い。
急に息苦しくなってきた。なんで気づかなかったんだ、
至急浮上を試みる。
脳裏で響いた
『気をつけろ』
顔を出すと息ができた、このまま浮上しなかったら今頃死んでいたかもしれない。
助かった命拾いしたよ、ところで君は誰?

***

綺麗な花には毒があり
不気味なもの程魅力的で
危険な事は面白い。
魅せられれば魅せられる程に
自身の命が削られていく。
いよいよ危機に直面した時

『気をつけろ』

と、名もない誰かが知らせに来る。
赤信号になる前に
ボンベが空になる前に
そうなる前に

ところで君は誰?


自由詩 危機一髪 Copyright  2016-06-11 18:21:18
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