大親友
あおい満月

あなたはいつも、
私の前を歩いていた。
私にはそれが、
とても誇らしかった。

はじめて出会ったのは、
高校の入学式。
女子校だった私たちは、
友達づくりに精を出した。

あなたは私のとなりの席にいた。
挨拶からはじまった私たちは、
最初はそれほど打ち解けなかった。
あなたはとても寡黙だった。

私はあなたが描く漫画が好きだった。
ロマンチックかつドラマチックで
詩のように美しかった。
私はあなたに詩を書いた。

何日か経ったある日、
あなたも私に詩を書いてくれた。
私は驚いた。あなたには、
絵だけではなく詩の才もあったなんて。

あなたは文武両道だった。
勉強は常にトップクラス、
バスケ部ではレギュラー、
私はひたすら農園の水やりだった。

お互いアルバイトをはじめた高2の夏、
夜によく近場のカラオケにいった。
私たちはカラオケをはしごし、
ファミレスで夜明けまで話をした。

進路を決めるために私たちは、
別々のゼミに通った。
私たちは大学を蹴り、
ともに短大に進学した。

時が経って社会に出てから、
あなたとの連絡も途絶えてしまった。
深夜の電話のベルに起こされた。
十数年ぶりのあなたからだった。

休日の昼に私たちは
亀戸で待ち合わせた。
久しぶりに会ったあなたは、
少し痩せて生き生きしていた。

今は
イラストと油絵を描いて暮らしているの
とあなたは言った。
あなたは私に一枚のチケットをくれた。

画廊のなかで、
思わず立ち止まり、
一枚の絵に釘付けになった。
絵のなかにいたのは高校生の私だった。

私は思わず涙があふれた。
長い間、あなたは、
私をみつめていてくれた。
私の知らないところで。

あなたはいつも、
私の前を歩いていた。
そのあなたが描いた絵のタイトルは、
「大親友」

不忍池の水面に、
睡蓮が揺れている。
心にあたたかいものがあふれて、
私はあなたへの詩をまた書いている。


自由詩 大親友 Copyright あおい満月 2016-06-11 09:01:09
notebook Home