森を想う
ヒヤシンス


 遠い記憶を辿ると僕はいつでも森の中にいる。
 そこには寂しさも悲しみもない。
 ただ胸のワクワクするような楽しみや嬉しさばかりある。
 自分一人だけの秘密がいつでも隠されている。

 森のぬくもりに包まれている僕は大人だ。
 少年の頃の僕の心は茫洋たる海だった。
 いつしか僕の心にあらゆる壁が構築された。
 それはこじんまりとした森だった。

 限られた森の中で僕は自由だ。
 散策の中であらゆる人生を味わった。
 そして未だ知らない事の方が多い。

 悲しくもないのに涙ぐむのはなぜ?
 記憶と現実はつながっているから。
 森という母胎の中できっと僕は生きているのだ。


自由詩 森を想う Copyright ヒヤシンス 2016-06-11 03:52:54
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