都会の空は狭いってよく聞くけど、案外そうでもなかった。
少年(しょーや)
2012.11.25 日曜日
もうすっかり病みつきになってしまったあの人の舞台を観に、大阪へ。
大阪っつうと今までUSJくらいしか行ったことなくて
街並みがどんな風景なのかどこに何があるのかもほぼ100%無知。
最寄り駅から鶴橋駅まで2本の路線を使い
鶴橋駅から環状線に乗り換える。
ここまではいつものパターン。
そこから先、環状線で向かうのはご存知我らがユニバーサルシティ!!!!……ではなく梅田。
うめだ花月のあった梅田。
2008年10月31日に惜しくも閉館してしまった笑いのライブハウス的存在のうめだ花月のあった梅田。
駅を降りてまず思い知らされたのが駅の広さ。
人の多さより、駅の広さ。
ばかみたいに広い。でかい。いちいちでかい。
近鉄名古屋駅が子供だましに思える。
なんとか脱出して、まずは会場であるサンケイホールブリーゼの確認へ。
が、迷う!同じ景色、同じような色のビル、同じ制服のガードマン。
え、ここどこ?なにこれ?!iPhoneあいふぉん……。
が、電池がない!ここにくるまでひたすらiPodを再生しすぎたのか、電車の中でTwitterやらmixiやらFacebookやら見すぎたのか残り30%のバッテリー先輩勘弁して下さい。
とりあえず、すぐそこに会場があるようなのでまずは下見。
なんとかたどり着いたそこはとても田舎者には場違いな綺麗でオシャレで高級そうな高層ビル。
それよりもさらにでかいビルに囲まれていたせいか、とても小さなホールに見えたが奥行きがこれでもかと言わんばかりに広がっている上に33階建てという強者タワー。
これが都会ってやつなのか……。
ひとまず会場を後にしてから次は百貨店でも見ようかと思った矢先に、来ましたバッテリー先輩の逆襲、残り10%をきったiPhone。
ちょうど近くにソフトバンクショップを発見…というかこれもなけなしの10%のバッテリー先輩に土下座する勢いでマップアプリで検索した。
充電をお願いし、小腹が空いていたのですぐそばにあるスタバ入店。
オープンカフェ造りになっているスタバでキャラメルマキアートすすりながら辺りを見渡す。
「あ、あそこにタワレコあんじゃん」
そこには我が庭とも言える大型レコードショップ、タワーレコード。
しかも、「タワー」と銘打っておきながら店内に入るには地下へと続く階段を降りるというなんとも言えない構造。
キャラメルマキアートを飲み干して早速物色へ。
来るべき地下ダンジョンに一歩一歩近づくにつれて「TOWER RECORD」の二段配置になっているのデカデカとした看板や冷風になびくフラッグで視界が黄色く染まる。
まるで隠れ家的アジトにでも帰還するような趣のあるその階段を降り、我が庭へと一歩足を踏み入れた。
これも都会の恐ろしさか……あれだけ狭っ苦しかった地下ルート入り口とは打って変わって目の前に広がる庭園はあまりにも広かった。
さっきのブリーゼタワーと言いこれほど空間を有効活用するとはさすがだ……。
バッテリー先輩の機嫌が良くなった頃を見計らってiPhoneを回収し、次はようやく阪急うめだ百貨店へ。
しかしながら迷う迷う。マップで見る限り徒歩10分と表示されたその距離に10分どころか2~30分以上はかかっている気がする。
慣れとは恐ろしいもので、この頃にはもうそれほどビルの高さや人の多さ、車の多さには驚かなくなってきた。
が、それと同時に沢山の声が聞こえてきた。
人の発するそれだけだけでなく、目に映るこの街の声とも呼べるものが聞こえてきた。
横断歩道で歩行者を見守るガードマン。
目の前の信号が赤になったのをいい事に、歩道に座り込んでいるホームレス風のおっさんと雑談をし始めた。
なんだか二人共とても楽しげであって微笑ましい。
大通りからすこし逸れた高架下の歩道を歩く。
そこに飛び込んできたのは、Call Of Duty Black OpsⅡの宣伝トラック。
そして、もう少し奥に目をやると巨大なペプシコーラがプリントされたトラック。
背景に広がる高層ビルや中央分離帯の木々と相まって、どこから見ても画になる。
百貨店内にはエリアごとに何々番街という名前の区分けがしてあり
その名の通り、全体をひっくるめて大きな街になっているような場所だった。
そして、それより驚いたのが駅前付近の歩道にその真下に広がる百貨店を見下ろせるような穴が空いてるエリアがあった。
都会ってやつはなんでこうもいちいちオシャレなんだ。
相も変わらず迷いに迷いながら電車に揺られ次に向かうは心斎橋 アメリカ村。
たどり着くまではてっきりショッピングモール的な建物を予想してた脳みそをガトリングガンでありったけの弾丸をぶち込まれたような衝撃。
大通りから一本裏道に入った景色全てが、そこに広がる建物や装飾やネオンライトや看板、駐輪場、駐車場、自販機、カーブミラー、歩道…
あらゆる要素全てが「アメリカ村」というひとつのエリアとして成り立っている場所だった。
軽自動車一台通れるか通れないか、ぎりぎりの狭い車道を堂々と渡ろうとするワゴン車の目の前を、これまた堂々と練り歩く人の波。
一見危なっかしい光景に見えたがそうでもなかった。
ワゴン車は歩行者の行列が去るまで延々と待ち続けていた。
その合間を縫って自転車やらバイクが突っ切ることもなく、暗黙の了解、阿吽の呼吸というやつが働いているのか「歩行者優先」という
当たり前っちゃあ当たり前だがなかなかどうしても守れない秩序がいとも簡単に守られていた。
時々、黒人の男に何度が話しかけられた。
「Hey,Brother!!オニイサーン。カイモノハ、コッチヤデー!」
俺には黒人の親戚はいない。いない。いない……はず。
せっかくだし一着だけでも服を買ってみようかと入ってみたジーンズのお店。
目の前にある商品の値段を見て驚いた。桁が一つ多いだろう。
他にもいくつか店に入ってはこっそり値札を漁ってみたが、とても手が出るものではなかった。
こちとら2000円のTシャツでもまだ高いと思う田舎モンだ!!
アメリカ村のビレバン単独店で時間を潰し、さていよいよ舞台の時間が迫る。
きた道を戻り、ブリーゼタワーに向かう。
そこでまた目にした光景は、さっきのホームレス風のおっさんと仲良さげに話していたガードマンと同じ制服を着た高齢のガードマン。
監視していた歩道の信号が赤になるかならないかの瀬戸際で自転車が突っ切ってきた。
幸い、それに交差する車は一台も飛び出してこなかったが(これも暗黙の了解か?)
それを見た高齢ガードマン「おい!!自転車!!!!お前信号見えんのかボケが!!!!」
と、そこまで言うかと思うほどのヤクザまがいの言葉遣いで怒鳴った。
自転車に乗った兄ちゃんは軽く会釈をして、そのまま去っていった。
会場に着いた頃には辺りはすっかり暗くなっていた。
それにしてもでっかいなぁーと、タワーを見上げたと同時に星空が飛び込んできた。
街灯やネオンライトのそれらとは明らかにかけ離れたかすかな光、しかしながら確かな存在を示し続ける光を放ち遥か上空で瞬いていた。
都会の空は狭いってよく聞くけど、案外そうでもなかった。