巡る天体
Seia

キツネかなあ
空からふる
陽射しと水滴に
わたしと傘は迷っていた
せっかくの予報を
信用しないで
折りたたみをバッグに
放り込んでいてよかった

シンボルの前で足踏みする
こどもとこども
つられそうになって
膝をあげた
あと数センチ
よごれちゃうな
こめかみの後ろで声がして減速
水たまりを避け
不時着するスニーカー
大いなる一歩を踏み出して
駅ビルの中へ

エスカレーターに揺られながら
ガラス越しに紫陽花が香る
毒があるってほんと?
また後ろの方で声がする
振り返ったら
後ろのひとも振り返った
振り返りを繰り返して
髪の色でオセロを
つまづきそうになる
終点
そして

太陽は出てるんだけどね
正しい携帯電話の使い方をして
軽く急ぎ足のひと
すれ違うひと
ふたりにひとりは
視線が上を向いている
このまま晴れだといいんだけど
さっきのひと
往復してるのかな
鈍い音
肩に柱があたる
砕ければよかったのに
どちらかが

ジルコニアの
横を通ってドアを開ける
雨はもうふっていない
かわりにたっぷりとした雲が
飛行機を飲み込んでいるところだった
期待はずれの顔が
ちらほらこちらに向かってくる
外は溜め息で生温かい
それじゃあまた
声は遠くなり
耳鳴りがやまない
二百八十歳のわたしと重なり
見上げた空から
最後の一滴


自由詩 巡る天体 Copyright Seia 2016-06-06 19:32:32
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