夏待ち
レタス

もう何年前になるか記憶は失われている
アルバイトをして夢を叶えた
マニュアルの一眼レフカメラの感触は
ぼくにとってダイアモンドの輝きを放っていた
モノクロの光と影の余韻がたまらなく
刹那の瞬間を指先で捕らえようとした
これは素敵な写真だろうと
その時は思っていても
現像してみると
なんと陳腐な物だと落胆の連続

今はデジカメがのさばり
フィルム写真はひっそりと肩をひそめるばかり

それでも眼の虹彩はフィルムの光と影と風を求め
ぼくの指先はマニュアルカメラに誘われている
オートフォーカスでは再現できない
陰影と空気を切取りたいのだ

まだ大丈夫
フィルムは暗闇の中でも息づいている
絵を描くように撮りたいのだ

空っぽのような財布をはたいて大判のカメラを買った
しかし今は梅雨時
濡らしてはいけない宝物を外に出すわけにはいかない
真夏の空が待ち遠しい




自由詩 夏待ち Copyright レタス 2016-06-06 19:02:27
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