嘘つき
ヒヤシンス


 黒いドレスを纏った貴婦人が僕に手招きをする。
 ミッドナイトパープルのスーツを着た紳士が僕に目配せをする。
 あらゆる人が僕に甘い言葉を囁きかける。
 そして僕はまた一つ嘘をつく。

 月夜の晩に青いバラが咲く。
 チューリップは僕の手に負えそうにない。
 虫除けに植えたハーブも役に立たない。
 誰の目に触れずとも僕は見ているよ。

 目覚ましのブルーズも今の僕には眠いだけ。
 泣きのギターも耳障り。
 目覚ましのブルーズで二度寝する。

 嘘つきの僕は誰よりもアンテナを張っている。
 もう騙されるのは懲り懲りだ。
 そして僕はまた一つ嘘をつく。


自由詩 嘘つき Copyright ヒヤシンス 2016-06-04 04:57:31
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