葬列の午後
レタス

次第に近く聞こえてくる潮音が
夏の間近にやって来た
汗ばむうなじをフェイスタオルで拭きながら
海沿いの路をトボトボ歩いて
バス停近くの
紅い暖簾の中華そば屋にたどり着いた

一息吐いて
ラーメンと餃子を頼み
寝そべるトラネコにシャッターを切り
煙草を吹かし
黒いネクタイを外した

友の葬儀は約束のように終わり
軽石と化した骨を拾った

遅い午後の中華そば屋には客は無く
うねる波の音だけが店内に渦巻いていた

コップ一杯のビールをあおり
空に消えて往った友と最期の乾杯をした

ビールが好きだったお前は
ビールを飲み過ぎて風呂に溺れて往ってしまったのだ

いま互いに後悔しても始まらず
言いたいことなど無くなった

次は俺の番だと知っている
待って居てくれ
大きな樽を担いでそっちに行くから

トラネコが大きなあくびをした午後は
あまりに静かで
潮音と時計の秒針が聴こえるだけだった









自由詩 葬列の午後 Copyright レタス 2016-06-02 18:17:08
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