死顔
レタス

山の彼方の遠くから
ほら貝と鈴の音が聞こえている
白装束に包まれ
神妙と横たわる私を
私は見た

父母の往ってしまった世界からではなく
中空の狭間に漂って
その屍を見ただけのこと

痛くも無く
悲しくも無く
ただじっと私の遺体を眺めているだけだった

やがて
シャラリ シャラリと
あの世からの迎えは来るだろうと
少し冷たい予感が走る

極楽か地獄往きの切符はまだ貰っていないのだ
どうして良いのか解らずに
涙を流す妻に接吻をし
友の寝顔を眺め
姉に別れを告げようと飛んで行った

次第にはっきりとした
あの世の音色が
私を迎えに来ている

点滅する紅いスイッチはもうすぐ消えるのだろう


自由詩 死顔 Copyright レタス 2016-06-01 18:06:48
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