黄金曲
レタス

琥珀の一滴が今夜を満たす
疲れ果てた肢体に染み込み
長い眠りに就いていた樹液の色が
今日一日の出来事を慰めてゆく

狂乱と協奏と競争に埋もれ
喘ぎながら走り続けたのは
何時からなのだろう

トッカータとフーガの槍が胸に突き刺さったのは
静謐さが充満した音楽室だった
42名の鼓動がドクリ ドクリと高鳴る教室は
今もあそこに在るのだろうか

生と死の門の狭間に立たされた
少年のぼくは
鳶色に澄んだ少女の驚愕を垣間見て
ロンギヌスの槍のような楽曲を初めて識った
彼女は健在なのだろうか

ぼくはこの胸を突かれてから
眠れない夜が続いている
琥珀の液体がなければ
何時しか眠れなくなってしまった
紅蓮の業火に焼かれた
見えない背中の紋様が
のたうちまわり
今夜もタロットカードで明日を占っている

灼熱のこの痛みは誰が知るだろう










自由詩 黄金曲 Copyright レタス 2016-05-31 23:30:17
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