まつかざり
藤鈴呼


玄関先に
見たこともない塊が
置いて在った

きっと 強風で まとまった落ち葉なんだろうということは
一瞬で 見てとれた

けれども

昨日まで 真っ白だった アスファルトが
カラフルに 染められている様は
正に 圧巻

悪寒の走るほど 寒い冬の朝だった
タイヤ交換は してしまったから
世の中の皆が 晩秋と呼んでいようとも
私にとって この季節は 既に 冬なのだ

アスファルトが ホワイトアウトしてしまいそうな程
吹雪いた思い出など 一度しかない
あれは 東北道を 走り続けていた頃のお話
忘れてしまうほど 昔 むかしの お話なのかも 知れなくて

目を閉じた

ガタタン と 身震いしたかのように思えた身体が
静かに くねる

動かした 記憶などない真の像が
とくん と 波打った

ここは 空電車
誰も 乗ってこない代わりに
黒猫が 活き過ぎる

タイムカードは 打電した
振込は完了した
後は 時を 待つばかりだ

松飾を掲げるには
未だ 早い 季節に

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自由詩 まつかざり Copyright 藤鈴呼 2016-05-31 10:45:46
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