不法投棄地帯
ただのみきや

冷たい灌木の素足を芝草が覆う
うぶ毛のようなスギナの森
露に閉じ込められて朝の光が震えていた

「友よ お飲みなさい
こっちは先に頂いています もうすっかり
辺り一面へ溶けだして ほら太陽は驚くほどの優男

美しいものがあるわけじゃなし
あるのは原初の傷 堕天のたましい
ピンで留められた白い蝶の波紋 
井戸の前の壊れた手桶
まるで美しいと感じるような空白への投身

創造ト破壊 ソレハ
神ノコドモ二トッテ義務? ソレトモ権利?
――いいえ 性です

テレビジョンあなた
過去の地球から落っこちて来たのね
猿の惑星みたいに
野ざらしの固いボデイ
腐らないし葬られもしない 時折
山の陰影を受信してそれが当然みたいな顔してる

雲雀は歌い続けた光に酔い痴れて
ロープもなしでバンジージャンプ特異点へ
淡い影を裳裾のように揺らし幽霊たちは踊る

流れる音を隠して孤独へ寄り添う河のように
静けさはざわめきの中に憩い 
こっそりと書き連ねる誰にも辿れない足跡で

「貝塚を見に行きましょうか
誰かの悪戯描きが見つかるかもしれません

峠で廃棄されたあられもない死体が
走り去る時代へそっと手を振る




           《不法投棄地帯:2016年5月23日》








自由詩 不法投棄地帯 Copyright ただのみきや 2016-05-25 20:20:01
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