美しい女
坂本瞳子

岬洋子を知っているか
あの美しい女を
肉欲を体現したかのような
しなやかな肢体
長い睫毛に
繊細な細長い指は
透き通るほどの
白い肌に覆われている
滑らかに歩を進め
黒髪をかき上げる度に放つ
芳しいまでのオーラ
まだお前は知らないだろう
岬洋子を
あの美しい女を
知っていたとしたら
お前はもう
無我夢中になっているさ
せいぜい気を付けるがいい
せめてもの忠告だ
岬洋子は男を喰らう
標的にされたが最後
生き残る術などない
抗うことなどできやしない
あの魅惑の塊を前にして
逃げ道なんてないさ
肝に命じておくんだな
だとしても
幸福な最期は約束される
最高に美しい女の虜として
一生を終えられるんだから
薔薇には棘があるように
触れる欲望を掻き立てられ
艶めかしい白蛇のように
お前の懐に潜り込む
あとは甘い夢を見ながら
堕ちて行くだけ


自由詩 美しい女 Copyright 坂本瞳子 2016-05-25 00:44:01
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