ふたつ 未明
木立 悟







菩提樹の下をすぎる風
樹から樹が
葉から葉が生えつづけ
花のように鳥を囲む


火に息を吹きかけて
朝までつづく夜を描く
指と同じ大きさの火
曇の奥の月をひらく


夜と夜のわずかな差異が
午後の棲み処を照らしては消える
午後はいつも
どこかへ帰りたがっている


硝子に残る暮れの傷を
暗い虹が吸いつづけている
自らが自らにかけた呪いを
吸い尽くそうと集まってくる


あちこち破れた
ふたつの冬の手袋に
光が降りつづけ降りつづけ
蝶のかたちにまたたいている


嵐の後の氷には
様々な顔がとどまり
みな無表情のまま
混じり合う季節の波を見つめる


月があらゆる境いめを消し
夜には居ない者らを引き寄せ
無音の波の高低の色
彩雲と幻日の婚礼を見る


夜を巡る午後の軌跡が
風に刻まれ たなびいている
生きものは光に振り返り
再びはじまる空に染まる





























自由詩 ふたつ 未明 Copyright 木立 悟 2016-05-24 22:41:17
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