お子様のお冷
しょだまさし

「何度も言うけど可哀想にねぇ…」
「まだ小学生だったものねぇ…」
「親御さんのことを思うとなおさらねぇ…」

遅番の勤務について早々に
食事を終えても話し込んでいる
喪服を着た婦人客に水のおかわりを
入れに行った

婦人たちに混ざって一人いた男の子が
入れ違いにトイレに立った

彼女たちの分と合わせて
彼の分も注ぎ足しているとこう言われた

「さっきの人は忙しそうだったから
言わなかったけどお水一人分多いわよ…」
『申し訳ございません…お下げしておきます…』

御一行が帰った後も
男の子がトイレから戻ることはなかったのだ


自由詩 お子様のお冷 Copyright しょだまさし 2016-05-22 23:34:28
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