深夜シフトのコンビニ店員は
今日も、自動ドアの向こうにいる

23時から8時まで
これ以上にないほどダサい
緑とオレンジのうわっぱりを着て
レジを打ったり、品出しをしたりする
とても、とても
カッコいい


今日、店員は、ため息をついていた
無理なシフトにノーと言えなかったか
制服がダサイから辞めたいのか
あるいは
真剣な
恋の悩み？
はたまた店長の嫌がらせか
仕入れ個数の間違いか

いずれにせよ
テンローンという、なめた音とともに自動ドアがあき
ヤンキーも、おまわりさんも
タクシーの運転手も、ヤク中も
風俗嬢も、ホステスも
新聞配達も、夜勤の人も
不眠症のへんな女も、食えないフリーライターも
きっと必要で、多分、どうでもいい何かを手にもち
みんな、みんな、店員のレジへ行く

389円です
500円お預かりいたします
111円のお返しです
ありがとうございました。
いらっしゃいませ
フクロごリヨーですか？
オハシおツケしますか？

なけなしの500円玉を渡す手
万券出して、お釣りをもらう手
お弁当を受け取る手
みんなの手が、店員を通じて、つながっていく
釣り銭をもらった手には
それと知らずに、星が1つ

時給900円、22時以降は1200円で
自分を売り渡している店員は
深夜のコンビニを舞台に
夜をつなげて、星を見せる
魔術師となる

大丈夫って保障なんかどこにもない
強盗に遭うかもしれないし
脅迫電話がかかるかもしれない
明日のことなんてわからない
わかりっこない
わかってたまるか、と

きょうも、深夜シフトの店員は
どん底の日本社会という戦場で
武器も持たずに、立っている