切断の虚無
ひだかたけし

胸に空いた穴
は、
いつしか空洞となり
広がり続ける虚ろ。


人には、
決して忘却の底に沈めることのできない記憶
というモノがある。

深い愛情関係の唐突な切断、
無私の意識の中で相手の思念感情を体験できる瞬間が閃き在るほどの霊的な繋がり、
その暴力的な剥奪。

人は時間の経過の内で
自らがその繋がりから
生きて独り在るその力を
どれだけ与えられていたのか
を、
じわじわと思い知る。


何を待ち続け
何を求めるの
名もない日々が
訳もなく微笑む
(尾崎豊/゙贖罪゙)

独り在ることのリアリティは個体性は、
愛の繋がりの中で鮮明に実感され
孤立の中では、「孤」と「独」が混濁し不鮮明に濁り腐っていくだけなのだ。
そうして、
この界にこの界を、独り驚き在る強い意志が削がれていく。


胸に空いた穴
は、
気付けば空洞となり
張り裂け続ける無力。


自由詩 切断の虚無 Copyright ひだかたけし 2016-05-15 13:39:40
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