優しい女
ひだかたけし

わたしはバター
熱いあなたの舌に
乗せられ転がり踊り
少しずつ少しずつ
溶かされトロリ
液状になるの

そしたら、

一人難儀に苦悩する
愛しいあなたも
いつのまにか
蕩け溶け恍惚と
真っ黄色な笑い顔
点火するわよ123

そしたら、

黄白い炎が束の間
夜陰彷徨うあなたを
透明リアルに映し出す
私はその時にもういない
閃光一閃沈黙に蒼く震えて
無人の機械工場に響く金属音

ウゴメク闇 灰色帽子の工員
あなたはどこにも逃げられない
わたしの手にはまるで負えない
悪の存在が全てを物質と虚無に変えていく
バターのようには決して溶けない腐食水脈
地球の大地深く循環しその時を待ち構えている
あなたの脳髄は匿名性と恐怖に充満するばかり

ああ意識が遠退いていく
私はやっぱりバターだから
大人しく冷蔵庫で眠ってるわ
怨まないでね怨まないでね
これ以上は何も出来ない


自由詩 優しい女 Copyright ひだかたけし 2016-05-13 15:38:58
notebook Home 戻る