吸い殼
あおい満月

鏡を覗くと、
影の目がこちらを見ていた。
私も影に視線を返した。
すると鏡から影の手が伸びてきて、
私の輪郭を包み込む。

*

黒い塀がどこまでも続いていた。
私はび塀の向こうの世界が見たくて、
背伸びをしたり、
跳ねたりしたけれど、
黒い塀は私が伸びるほど大きくなって、
私の口をふさいだ。
私は刃で闇をある日切り裂いた。
そこから覗いた世界は、

**

そこには、
小人のような人たちや犬や猫が、
起きたり転んだりしていた。
皆それぞれに忙しそうだったが、
彼らよりも大きな私は、
だるまさん転んだに見えて微笑ましかった。
影はもういない、
と思ったが、
交通路のミラーを覗き込んだ瞬間、
黒い手と赤い爪が、
私の目を引っ掻いた。
雨が降っていた。
赤くて窓ガラスに溶けていく、
赤い雨が。



自由詩 吸い殼 Copyright あおい満月 2016-05-08 19:43:43
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