日より
レタス
灰色の吐息がテーブルに満ちて
苦い珈琲が過去の想い出をたちのぼらせる
壊れた砂時計は絶えることなく
細かな砂を落とし
窓辺に佇んでいた
なかなか来ないオムライスを待ちながら
煙草を吸い
珈琲を啜っていると
やがて
チリチリと音をたてながら
オムライスがやってきた
半熟トロトロの玉子の下にたっぷりと
盛り上がったチキンライス
鮮やかな朱色がまなこに焼きついた
そこは北へ向かう上野駅
ブルーントレインは廃止され
夜を楽しむ暇は奪われた
北に帰る列車はもう
ぼくには無いのだ
仕方なく浅草界隈を彷徨い
尾張屋の天麩羅蕎麦をすすり
帰宅した