窓から見える曠野
梅昆布茶
あるとき哀しみがやってきて
壁紙を引き剥がし読みかけの
テーブルの上の本を引き裂いてゆく
暗幕で覆われた部屋には夜しかない
そう曠野はいまこのこころに映る風景なのだ
それでも半額のシールの貼られた
総菜弁当をレンジで温めながら
生命はなにかを維持しようと歪み
撓みながらもかたちを保ち続けるものだ
喜びばかりが陳列されているわけではないショーケースには
ところどころにぽっかりと空洞のように穴があいていて
僕らはかつてそこに何が並んでいたのかさえ
もう思い出せないだろうが
いまはそれでよいのだろうとおもっている
その部屋はいつまでもとっておくわけにはゆかない
望もうと望むまいとにかかわらず常に模様替えされてゆくんだから
でもときどきあの部屋の佇まいを思い出すことがあるんだ