大脱走
枝
一度籠の外へ出た文鳥は
もう二度と籠へと戻っては来なかった。
衣食住何1つ不自由ない籠の中で
ひたすら空想の海に浸り
満足していた文鳥は
本物の海の広さを知らない、
知らなかった。
でも籠をこっそり抜け出した文鳥は
現実は空想よりもずっと
広く可能性に満ちている事を知った。
空も風も匂いも時間の流れもあった。
エデンだと思ってたあの場所は
ただの牢獄でしか無く
自分だと思って生きてきた自分も
実は別の存在だった。
そしてこの小さな羽は
世界をどこまでも行くことが出来る魔法の装置だったことも!
自分の力で生き抜いて行く為の
大切な装置だったのだ。
(私は今生きている!)
向こうから自分を呼ぶ声がする
大切な人の声がする、懐かしい...
でももうあそこへは戻らない。
雛の頃から育ててくれた
かけがえのない存在から
1人巣立ちする為の
大脱走