大脱走


一度籠の外へ出た文鳥は
もう二度と籠へと戻っては来なかった。

衣食住何1つ不自由ない籠の中で
ひたすら空想の海に浸り
満足していた文鳥は
本物の海の広さを知らない、
知らなかった。

でも籠をこっそり抜け出した文鳥は
現実は空想よりもずっと
広く可能性に満ちている事を知った。
空も風も匂いも時間の流れもあった。

エデンだと思ってたあの場所は
ただの牢獄でしか無く
自分だと思って生きてきた自分も
実は別の存在だった。

そしてこの小さな羽は
世界をどこまでも行くことが出来る魔法の装置だったことも!
自分の力で生き抜いて行く為の
大切な装置だったのだ。

(私は今生きている!)

向こうから自分を呼ぶ声がする
大切な人の声がする、懐かしい...
でももうあそこへは戻らない。

雛の頃から育ててくれた
かけがえのない存在から
1人巣立ちする為の
大脱走



自由詩 大脱走 Copyright  2016-05-06 12:42:58
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