呼吸
あおい満月

さらり、さらり、
骨になった粉が、
この手から空間へ流れていく。
さらり、さらり、
手にいれたものはなんだったのか。
なにもなかったのではないか。
私たちは手に入れられないものを手にした。
私たちが手にしたものは、
手に入れられないものだった。
逆説は砂時計のように、
流れては戻り、
戻っては流れるが、
手なづけてはちぎれていった、
あの髪は戻らない。

さらり、さらり、さらり、
水は流れる。
さらり、さらり、さらり、
波は急ぎを隠して、
東から西へと夜を流れていく。
居場所はない。
もしも記憶を手繰り寄せて、
あなたを置いてきた場所を、
思い出したら、
戻れるだろうか。
私がいた場所。

さらり、さらり、さらり、
風になり鳥が翔んでいく。
さらり、さらり、さらり、
風は時を名づけない。
風は海に呼吸を与える。



自由詩 呼吸 Copyright あおい満月 2016-05-04 19:08:11
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