出会い頭の事故
小川 葉



出会い頭の事故というのがある
この狭い家にも

トイレのドアを開けると
出会い頭の事故にあう

風呂に入ろうとして
ドアを開けると
その人はいつもそこにいる

襖を開けて
神棚の部屋に入ろうとしても
出会い頭の事故

思えばあの時
職場のエレベーターが開いた
そこにいつもその人がいて
出会い頭の事故だった

そうして二人
あきらめて
一緒になった

今は
足の爪を切っている

すると妻も
足の爪を切っている

真似すんな

真似してないわよ

その様子を
息子が興味深く見ている

足の爪を切った後
何をするかは知っている

だから
私は襖を開けなかった

寝室に入ると
そこに妻

なぜここにいるんだ

いたいからいるのよ

もはや
何かのちからがはたらいて
私たちふたりを
くっつけようとしているらしい

出会い頭の事故

その事故からは
二人は逃れることができない

だから二人の
子供が
ここにいる



自由詩 出会い頭の事故 Copyright 小川 葉 2016-05-04 03:29:04
notebook Home 戻る  過去 未来