飯坂線
葉leaf

風の強い春の日の中を走る
この二両編成のさびしい列車は
さながら私の部屋のような
根付いた親しみで満ちている
シートに座れば座布団のようで
人が乗れば来客が来たかのよう
そう思える寛いだ春の輝きを浴びて走る

蛇行する地点や橋を渡る地点
緑の谷間を走る地点や住宅街を走る地点
路線周りの風景は自室の窓からの風景のよう
ふるさとをより深く探索し
ふるさとと共に質問を投げかけ
幾つもの問いの渦の発端となる
つめたい意志を宿した列車

火は降り注ぎ花々として燃えた
隕石は落下し一人一人の人間を造形した
列車は速度を調整しながら厳密に走る
悟りなど開かないための
エクスタシーに陥らないための
ひたすら禁欲的な歩みのような走行だ
電車は一歩一歩歩んでいる
その歩みはこの飯坂の歩みそのもの


自由詩 飯坂線 Copyright 葉leaf 2016-05-03 14:51:09
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