百年の恋も…
イナエ
手など
近頃 じっと見たこと無いが
今朝 背伸びをしようと
上げた手を見てしまった
よじれた皮膚の連なり
幾重にもかさなった山脈のようで
これがわしの手かね
柔肌を撫でた歴史など
微塵も見られない
かつて
祖父と一緒に
棺に入れた手ではないか
権力を財力を掴み損ねて
垂れ下がった指
皺の谷から立ち上る悪臭
孫よ
この手に抱かれる前に
逃げよ
としても
私を支え 忠実に仕えて
家族を育て守って
老いた手
今なお生に執着する
艶やかな皺よ
自由詩
百年の恋も…
Copyright
イナエ
2016-05-03 10:03:58
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