福音
星丘涙
魔法なんて信じてなかったのに
苦しくてお呪いに頼ってしまった
始めはルーティンの様なものだったが
でもいつしかそれに依存するようになり
呪文が身についてしまった
その魔法の効力は数年間続き
何時しか魔法の虜になり私の精神は蝕まれていった
傲慢な魔女の様に恐れるものはなくなり
大衆からも多くの人気を獲得した
あまりの豹変ぶりにわたしは私についていけなかった
それほど魔術とは大きな力があるのだ
しかし所詮 魔術も人の作りだした自我の産物
やがて想定外の神の試練に根こそぎ潰されてしまう
そう人間の文明と同じように
そこには本来の弱い自分の姿しか残らない
人間とは神の前には本当に弱い存在なのだ
私の場合は魔術で自分を強くしていたが
人は時に金により また学問により 科学により
自分が大きくなったかのような錯覚にとらわれる
しかし最後の試練でもある死を前に人は我に返るのだろう
死んでもなくならないものを手にしなければならない
それは人間の自我の業ではなく神様からの業である