福音
星丘涙

魔法なんて信じてなかったのに

苦しくてお呪いに頼ってしまった

始めはルーティンの様なものだったが

でもいつしかそれに依存するようになり 

呪文が身についてしまった

その魔法の効力は数年間続き

何時しか魔法の虜になり私の精神は蝕まれていった

傲慢な魔女の様に恐れるものはなくなり

大衆からも多くの人気を獲得した

あまりの豹変ぶりにわたしは私についていけなかった

それほど魔術とは大きな力があるのだ

しかし所詮 魔術も人の作りだした自我の産物

やがて想定外の神の試練に根こそぎ潰されてしまう

そう人間の文明と同じように

そこには本来の弱い自分の姿しか残らない

人間とは神の前には本当に弱い存在なのだ

私の場合は魔術で自分を強くしていたが

人は時に金により また学問により 科学により

自分が大きくなったかのような錯覚にとらわれる

しかし最後の試練でもある死を前に人は我に返るのだろう

死んでもなくならないものを手にしなければならない

それは人間の自我の業ではなく神様からの業である


自由詩 福音 Copyright 星丘涙 2016-04-24 16:18:05
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