ドーナツの夢
やまうちあつし

ドーナツばかり食べている
その穴ばかり食べている
わたしがわたしであるために
あなたがあなたであるために
そのどちらでもないもののため
食べるたび空腹になるのはなぜ
願うほど切なくなるのはなぜ
それは例えば祈りのようだ
とどかない手紙のようだ
穴から夜を眺めたら
誰の銀河があるだろう
誰と誰とが笑っていよう
わたしがあなたであるために
あなたがわたしであるために
そのどちらでもあるもののため
全てのものから等しい距離を
その穴ばかり食べている
ドーナツばかり食べている


自由詩 ドーナツの夢 Copyright やまうちあつし 2016-04-20 11:34:46
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