みどり うたかた Ⅲ
木立 悟






曇のなかの金属が
鉱と擦れ合い 匂いを放つ
音の波を燃し
輝晶を放つ


光の槍
降るはふたり
ひとりは死びと
ひとりが背負う


左上が白い夜を
けだものは歩く
曇に残る昼の星と
片方の目で話しながら


遠い雨と近い雨
どちらかが作り物の雨をすり抜け
小さな音が到き来るのを
小さな目が見つめている


地が泣くのをやめ
空を見たとき
空も 空の上も泣いていた
何も無く 何も無く 泣いていた


血のかたちの風が吹き
空に空を咲かせている
音の火に浮き沈む笑み
水平線を埋め尽くす羽


虹 結晶 手首 手のひら
頬を辿る 光のひとさじ
花は花に 同心円に
まわりまわり 花になる


右目に積もる雪は溶け
見える鎖 見えない鎖が鳴り響き
音の波は碧に翠に
けだものの行方を照らしてゆく



























自由詩 みどり うたかた Ⅲ Copyright 木立 悟 2016-04-20 08:50:43
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