とおくなる浴室
Seia
電気を落とした
湯船に入り
じぶんの顔をまじまじとさわる
こんなところに
骨
あったっけ
どれだけいきても
わからない
ことは
どれだけしんでも
わからないのだろうよ
暗闇のなかから
ドアの外
反射して
うすぼんやり
点
滅しているのは
24時間働いている換気扇を管理する光
足を折りたたみ
上を向いて
全体を沈める
耳が
お湯に少しづつとけて
からだの
音が聞こえる
ちいさいころ
つまらないことで
ひびのはいった
小指の第二関節を
まげる
きしむ
とおい
音がする
今朝食べた
パンの歯ざわり
数年前
タクシーに轢かれた
バンパーの圧力
写真でしか知らない
幼稚園のクラスメイト
明日
起きなければいけない時刻
それぞれを
思い出す
目は
ずっと開いている
見えるものは
とてもすくないですけど
閉じたら
そのまま割れてしまいそうで
浴室の外
いつかのわたしが
バスタオルを広げて
帰りを待っている