ナルシス
レタス

この骨格を焼いてくれるな

使い慣れた体なのだから
大体の様子はわかっている

柔らかな肉に閉じ込められた結晶を埋めないで欲しい

おれの血管とホクロを知り尽くしたおまえだけが知っている
この体を失くしてくれるな
針金で繋がれて
学生たちに晒されても構わない

レントゲンを通して観た骨格は
我ながら美しく
埋めてしまうのは勿体ないのだ

葬式などはいらないから
この骨格を保存していて欲しい

こうして書いている間にも
10本の指先で
全身の骨をなぞっている

敬愛するバッハも骨を残した

幼い頃は骸骨に恐れおののき
後ずさりしたはずなのに
今となっては
全てが白くなっている

魂は三千世界に飛び散り
やがては別の命を宿すだろう

妻よ
このモノクロームの骨格を残してくれ



自由詩 ナルシス Copyright レタス 2016-04-17 01:28:36
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