ピアノマン
やまうちあつし

誰でも心に
ピアノを持っていると
どこの国の神話にも書いてある
だから無謀にもきれいな
旋律を探して
雨の日も晴れの日も
歩き回っている
この街は楽譜のようで
地下鉄が東西に走ったり
チンパンジーが脱走したり
ぼくはやさしいいきものをいじめたり
やさしさにほだされて湖を訪ねたり
弟が失職したり
知り合いの髪の毛が伸びている
ぼくは求めているだろう
魂に刺青をしているほどには
誰かに聞く耳を
遠くまで届く声を
歩けばいい
月の光が
本当のことを知っている
ピアノの音がするまで
ぼくの心をたたけばいい


自由詩 ピアノマン Copyright やまうちあつし 2016-04-15 19:42:02
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