VISION.02
ひだかたけし

宏大な界が突然開ける

視界右上奥に
空の濃く暗らんだ青が微かな裏光りを帯び沈黙して在る

視界中央仰げば
巨大な白雲無数、それぞれの意図を持ち漂い溢れ流れている

視界正面遠く近く
夥しいイボ状の隆起をみせるこれまた巨大な棒状の白雲、仄かな黄色い陰影を帯びながら振り子となって大地に伸び揺れ動く

その巨大な棒状イボ雲ゆっくり揺れるすぐ脇に
別れた妻と会えなくなった小学五年の長男が、こちらをぼんやり見ながら並んで佇立している
(大地には何人もの人々の、立ったり座ったり走り回ったりそれぞれ思い思いのことをしている黒い影)

気付けばすぐ側では
会えなくされた高校2年の愛娘が、近付いてきたり遠去かったり

そうして私は胸底深く穿たれた空洞を抱えながら
    この意志持つ宏大な世界の光景を
     只只圧倒されて観続けている


自由詩 VISION.02 Copyright ひだかたけし 2016-04-11 12:24:45
notebook Home