人生の選択
ヒヤシンス
すべての家の窓は閉められている。
通りには誰ひとりいない。
路地裏は灰色の匂いがする。
この世に僕一人しかいないような感覚。
家並みを抜けると開けた田園地帯になる。
僕は緑のチェルシーを頬張る。
田園はそのまま森につながってゆく。
森が僕を待っているのだ。
ルノワールの栞が挟んである本を取り出し開いてみる。
そのページは白紙だったので文字を書き込んでみた。
本日異常なし、幻ひとつ。
森はいつでも僕に優しい。
夢幻の包容力はとても緑で爽やかな匂いがする。
小さな決断を繰り返しながら僕は今日も生きている。