友へ
ヒヤシンス


 私の永遠の旅人、桜の季節を軽々と飛び越えて初夏を待ちわびる君よ。
 届いた手紙には、すでに爽やかな風の匂いが沁みついていたのだ。
 それはまさしく五月の風。しかし君の無理難題には答えられそうもない。
 君は病院のベッドでこの爽やかな手紙を一人書いていたに違いない。
 孤独な旅人よ、今はまだ安らかに眠るがよい。

 与えられた時の中で、君よ、今日も長い手紙を書くのだろう。
 窓から見える木々の葉はきっと生い茂っているだろう。
 私は返事を書かないが、君は決して失望してはならない。
 なぜなら君は私の半身。
 私は遠方の客人として君の帰りを待っているのだ。

 私の永遠の旅人、君よ。
 私の半身よ。
 今こそ私も君と共に漂泊の旅人になろう。
 そして麗らかな五月も飛び越えて初夏の日和に君と会おう。
 あの思い出の草原で日がな一日君と語らおう。

 君の愛した活火山の村は今も昔の面影を残している。
 君よ、描け。
 颯爽と吹き抜ける風に詩を乗せてゆけ。
 時を吟味し、季節を感じ、思想を吐き出せ。
 寄せては返す波のように私らは今この瞬間を重ね合うのだ。


自由詩 友へ Copyright ヒヤシンス 2016-04-02 04:48:18
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