みどり うたかた
木立 悟






水に浸された石の橋が
ほどけるように歌っている
緑の空
緑の空しか信じない
常に 手のひらひとつ分の


目をつむれば
揺れる景色
霧の径を
くりかえしくりかえし渡りつづけた夜


灯の中心から生まれる蝶
海へ海へ落ちる曇
むらさきはみどり
手のひらにあふれ


星が返す言葉
積もることのない光糸
霧を照らす
足跡の炎


短すぎる雨のあと
昼と午後の夢から覚めて
未だまぶしく見えない左目
手のひらに残るわずかな緑


日々新しい花が咲き
子らは名付け 駆けてゆく
涙は育ち こぼれるばかり
夜は幾重にも鳴るばかり


降る花すべてを受けとめようと
万華鏡のように泣きながら
手のひらはひらきひらきつづけて
緑を緑にこぼしつづける




























自由詩 みどり うたかた Copyright 木立 悟 2016-03-29 09:07:18
notebook Home 戻る