灰色景
塔野夏子
灰色の薄明の底に
灰色の湖が静かにひろがる
その汀にひとり佇んでいる
灰色の薄明は薄明のまま
明けることも暮れることもない
灰色の湖はただ静かだ
誰の 何の気配もない
ただこの場所は この時間は
こうしてひとり佇むためのもの
そのことを知っているから
この灰色を満たすさびしさも
不思議になつかしく やさしい
私はこの景色の中で
他のどこに居るときよりも
清らかな息をしている
自由詩
灰色景
Copyright
塔野夏子
2016-03-27 21:29:59