小さな嫉妬の粒を
オイタル

小さな嫉妬の粒を
指先でつまんで丸めてみる
日暮れて家へ帰ろうと思うのだが
行く先が知れない

たくさんの人たちが
出立する暮れ方の川辺の
薄れていく土手の向こう
たわんでいくぼくの背中

壊れ物を置くようにそっと体を下ろした
眠るベンチの下で
だれかが穴を掘る
耐えられない 強い穴を掘る

やがてどこかの夜の
おぼろな灯の溜まりから軒下へ
猫の黒い影は長く伸びて
遠く三月の闇を渡る


自由詩 小さな嫉妬の粒を Copyright オイタル 2016-03-26 22:05:00
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