ベンジャミンバニー
Lucy

百均で買ってきた
ミニチュアの黒いうさぎは
手のひらに載せて
選りすぐろうにも
どれもみな
哀しくなるほど同じ顔
同じ姿勢同じ表情
どうしてこんなに正確に
大量生産できるのか
まるでクローンだね

気のせいでしかないけれど
一番かわいいのをどうにか選んで
私のにした
ベンジャミンと名前つけて
机の上の
電気スタンドの下に
すぐ見えるように置いている

黒いうさぎの
赤目にいつも私が映る 
誰も見てない
何も言わないベンジャミン
 
おまえは私にそっくりだね
個性なんてどこにもなくて
みんなと一緒に
籠の中でひっくり返ったり
踏まれたりして 
一個百円で売られてた
時給七百十円で 
同じ色のユニフォーム着て
誰がやっても同じ仕事を
マニュアル通り何とかこなし
疲れ果てて一日を終える

それでも 
足の引きずり方 
肩の落とし方
夕陽を見上げてよぎる想いは
私だけのもの

本物のうさぎだった時の
記憶なんてなくても
うっすら光をたたえたおまえの樹脂の目に
映る私は私だけの私

だからベンジャミン
おもちゃ箱の中に居た
私を見つめ私に話しかけてくれた
あのぬいぐるみや人形のように
誰も見ていない真夜中には
その後ろ脚でぴょんぴょん跳ねて
一人ぼっちで
踊ってほしい


 





自由詩 ベンジャミンバニー Copyright Lucy 2016-03-26 19:04:38
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