スベトラーナ春に酔鼠
アラガイs


鼠夜桜ひきつれて

にぎやかな繁華街を抜ける
路地は大小二つに分かれ
月を眩ませる
再び斜影/方に肋膜の炎
告知する薄墨色
派手な更紗を纏う老婆を気にとめた
絵柄のカードをなにやら詠んでいる様子
紅紫の唇が興味を引いたが
焦り通りすぎて行く
老婆は長い付け睫毛をニタリ
黒いショールを振ると私を二度みやる

小さな路地裏を歩く
敷居のない庭先
石畳をコツコツと鳴らす音
春には海がながれ
秋には山がしおれる
椿にひっそりと苔咽ぶ首塚
奥へ奥へと片開きの戸口が並ぶ
狐が尾をたてる
格子の窓は開かず

…我が庵はつれこみ宿と人はいふなり…

変貌する街並み
凡庸が繋ぎとめる日々
写し出す鏡は人々を驕りへと変えてゆく
孤独が孤独を誘い
蓼食らう虫の舌と味
毎日が密会ならばどんなに幸せだろう
外界と下界をつなぐ屋根の下
鎖のない牢獄
朦朧と煙草を燻らせば
嘘でも会話が恋しくなる

清みわたれば空駆ける鼠

下心あれば上心に
ほら穴から覗く狸の小さな眼
再会した女は我知らず
白狐の皮を貪り
煮えない棘を刺す
あのとき二度もすべったじゃん
…虚無虚無虚無だよ
老婆のカードは星座
いや、ただの暦(干支)だった
腹を見せれば何度も殺される
!五月蝿いね
ちょろちょろと動きまわる子供を指せば罵られ
昔話は要らないなら噛み合わない
私は尻尾を巻いて
居酒屋を走り出た 。










自由詩 スベトラーナ春に酔鼠 Copyright アラガイs 2016-03-26 00:48:52
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