詩にこもる詩
ベンジャミン

ラブ&ピースは聞き飽きた。
愛や平和を、よりリアルにしても、逆説的に浮かび上がらせても、結局そこまでの距離は変わらないんだ。希望や夢も同じ、何かに近づこうとするとき、そのアプローチの仕方を考える。詩はその方法として僕にとっては一番の近道なのだけど、詩にこもる詩を書いてしまう。それは美意識や展開やその他様々の技に足元をすくわれてしまうことだ。
閃きがあたまをよぎるとき、僕という変換機能が働く、それはまぎれもなく個性であり、僕という一人の人間の尊さに等しい。でも、僕が求めるところは違うところにあって、たとえば「銀河鉄道」という言葉を聞いたとき、宮沢賢治が浮かぶよりも、銀河鉄道が思い浮かぶというところだ。
言葉の折り目を開くとき、それが大胆であっても、繊細であっても、その言葉以上を発見できたなら、そんな素晴らしいことはない。
詩にこもる詩は、僕をその一瞬だけ救ってくれる。けれどどれだけ厚く重ねても、それは僕に似たかたちをした装飾にすぎない。
今は、少しずつ剥がしている。
期待はしていない。むしろ怖いくらいだ。
けれど、美しくなくとも、誇れるようなものでなくとも、
せめて
僕の死を救うくらいのものであってほしい。
それはきっと「詩にこもらない詩」だろうからさ。


未詩・独白 詩にこもる詩 Copyright ベンジャミン 2005-02-23 09:25:32
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