紡ぎ合う
由木名緒美

夜明けの群青の空に
透明な風の蛇がうごめいていて
脊椎に貫かれた腹でゆっくりと気流を動かしている

白んだ月は皮膚を通過し波状に広がる光を手放す
朝を迎える前の消印のように
反復ゆえの忘却に身を委ねる

信じる義務がないから
まるで当然のような顔をして
未知の信者になってしまう
悲しみの義務がないから
より悲惨な実像を幻視してしまうんだ

椀に浸した雨水が
幼子のような嬌声を上げる
小さな水面に踊るのは
どんな落下も重力に抗えない故なのでしょうか

夜明けの蛇はとても臆病なので
朝陽の熱では蒸発してしまう
午後を揺蕩う白い雲は
彼の千切れた皮の断片

太陽にロープを投げれば引き寄せられそうな
絶望的な近距離感
手を固く握り合うまでは
幾夜の梯子を果て無く延長させる
今この「一秒」が遠のくまで
私達はずっと



自由詩 紡ぎ合う Copyright 由木名緒美 2016-03-25 03:07:13
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