jazzと珈琲と火事と詩
ただのみきや
2016年3月21の吹雪
対
マイルス・デイビス
「Bye Bye Blackbird」
コーヒーの湯気と
古いポートレート
中心を射抜く光点
燃え落ちて灰の花
――Replay
Slow-motion
遺骨のようなものが
歩いている
言葉を纏い
白紙の上を
思想の屑籠
皮を剥ぐ人
裸の舌と指
原色の腸は
磔にされた
壁画の丘で
ただ
swing
2016年3月21日の火事の
黒煙を見る
痛
幻のように
泣いた犬よりも鳥よりも
swing
して
どこかでいつかうまれるおと
処女の雫のまま
円い骨格を穿ち
いともなく紡ぐ
像の揺らぐ語彙
どこかでいつかしんでゆくおと
いまは光の面差しで
時の小河を下れ
オフィーリア
憩え蝶のように
やわらかな口もとへ
抜糸された瞳が
冬を空洞にする
《jazzと珈琲と火事と詩:2016年3月21日》