アンサースクワット
カンチェルスキス

 

 遠い河口で
 無数の鯔が
 跳ねるとき


 駅はもみくちゃ
 快速列車が
 一掃した後


 ただ一人
 残った婦人が
 ベンチ横で
 旅行鞄を下ろす


 組んだ両手を
 頭にのせて
 ゆっくり
 膝を屈伸させる


 見覚えのある
 スクワット
 

 生き別れた
 母さん
 やっと
 出会えたね


 組んだ両手を
 頭にのせて
 ゆっくり
 膝を屈伸させる


 母さん
 ぼくです


 平行線 
 四本のレールは
 ひとまず
 合流して

 
 これから
 どこへ行くか
 どこからか
 流れてくる
 ド演歌の前奏


 涙涙
 涙乾くまで
 アンサースクワット


 西日西日が
 過去を
 ふり解く






自由詩 アンサースクワット Copyright カンチェルスキス 2016-03-21 02:11:58
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