吉岡ペペロ

どこからかハーモニカの音がした

なつかしい

ぼくは酔いと怪我でふらついていた

雨があがっている

砂で固められたような道が月明かりにひかっている

ぼくは路地の奥にすすんでいた

いたんだね

涙があふれてきた

春の夜風がからだを冷やしていく

足を擦る音が自分のものではないようだ

まっすぐ歩くだけなら痛くはない

大丈夫

バンザーイ、バンザーイ、

ぼくは顔をぐしゃぐしゃにさせて嗚咽していた

溜まり水に月が映っていた

犬の遠吠えがひとつ聞こえて

それっきり町が静かになった

ぼくの嗚咽と足を擦る音だけになった







自由詩Copyright 吉岡ペペロ 2016-03-21 02:06:10
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