雨
吉岡ペペロ
どこからかハーモニカの音がした
なつかしい
ぼくは酔いと怪我でふらついていた
雨があがっている
砂で固められたような道が月明かりにひかっている
ぼくは路地の奥にすすんでいた
いたんだね
涙があふれてきた
春の夜風がからだを冷やしていく
足を擦る音が自分のものではないようだ
まっすぐ歩くだけなら痛くはない
大丈夫
バンザーイ、バンザーイ、
ぼくは顔をぐしゃぐしゃにさせて嗚咽していた
溜まり水に月が映っていた
犬の遠吠えがひとつ聞こえて
それっきり町が静かになった
ぼくの嗚咽と足を擦る音だけになった