記憶
藤鈴呼
わたくしは 帰路に立つ
その前に あるのが
記録できる 紙切れのような
薄っぺらい ものなのか
噛み切れぬ スルメみたいに
味わえる ものになるのか
全ては わたくし次第でも あるけれど
あなた次第でも あるのでしょう
あなた それは
過ぎ去った いつかの人
擦れ違った いくつかの人
そして 目の前に いる
あなた なのです
改行部分と スラッシュで
16分音符が 見えた 気がした
果たして それは
清々しい ポップスか
奈落のクイズマスターの
応えが 欲しい
曇天を 見上げながら
どんてん の そら なんて
有り得ない、と 呟くと
重複した部分が
きゅっ と 引き締まって
わたくし自身も
まるで 一回り
小さくなったかの ようだ
それが 錯覚だって
知っているけれど
幾つもの 記憶を
重ねて 活きる内に
それも 一枚の
紙切れと なる
そして 一本ずつ 髪の毛を
こそぎ落して行く その 代わりに
一センチずつ 新しい芽が
出始めて いるのだと
この 胸を 叩きながら
信じたい
わたしは
わたしを。
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