夜へ 白へ
木立 悟
曇の上の雨
陽が照らす鏡の背
朝の径に降るかけら
午後の径をすぎるひとひら
空の海が
黝く干いてゆく
まばたきのなかの無数の月
夜が 流れ込んでくる
戸口から戸口へ
影が影を届け
やがてひとつひとつが小さな
冷たいかがやきとなってゆく
淡い光の円が重なり
再び雪が来ることを告げ
黄色が見えない鳥は歩き
霧の径に消えてゆく
冷えてゆく音 転がる音
互いを突つき合う音が降り
窓の内は騒がしく静かに
粉の波に満たされてゆく
こぼれるものが
こぼれつづけるものにこぼれ
大きな流れを変えていき
とどまるものも とどまらぬものも
しずくの底の星をめぐる