書かれた-祖母
非在の虹

まず死を見に行く
コントロール出来る死をいただく
痴呆症の祖母から
工事現場でつまづく
湿地帯とくねる道に隠される祖母
工事現場でつまづく
痴呆症の祖母から
コントロール出来る死をいただく
まず死を見に行く

 *

祖母の呼ぶ声が聞こえる。
こどもは家と家に挟まれた。
見上げると黒い軒があった。
こどもはその色に漏らしてしまった。
温かみが腰の周りに絡んで来ると
足元には溜りが出来始めた。

家の中は冷えきっていた。
その中で祖母は小遣いを用意して待っていた。
糞とスルメも用意し待っているのだ。
こどもの掌の中でそれは黄金色に輝いた。

正面に「お客さん」がいた。
こどもは「お客さん」の目を盗み
家具の隙間に入った。
手持ち無沙汰ではなく
はっきりとした快感に手はペニスに置いておく。
祖母は一部始終を知っていた。
もちろんこどもはそのことに気付いていない。

子供のお使いは同じ物だ。
煙草 納豆 鼠捕り 犬捕りなどを買いに行った。
空の買い物籠だけが日中に去り難い。
それで縁側はある。
夜になった。
縁側を這う祖母がいる。

 *

先ず死を見に行く
コントロール出来る死をいただく
町角の葬式はゆっくり菓子を配る
ゆっくり犬が血を流している
ゆっくり祖母が死んでいる


自由詩 書かれた-祖母 Copyright 非在の虹 2016-03-06 23:13:53
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