日かげから日なたへ
遙洋



駅からでてすぐの交差点

横断歩道のこっちがわに祖父がいた

うしろ姿だけですぐわかる

人の往来のなかで

ならったこともないのに詩吟を



ほんと、なんで詩吟なんか

でもその昔やってたのかもしれない

だってインコを飼って可愛がってたってことも

ついこの間まで知らなかったくらいだ



かわいた風にほこりが舞う

かすれた声をはりあげてるのに

だれもふり返ったりしない

なんかすごく、ものがなしい

その時点でもまだ

ゆめだと気づかなかった



日かげから日なたに

あっちには若いひとたちが次々に入っていくカフェがある

何うたってるんだろう

じいちゃんの声で再生されている詩は

この世のどこにあるんだろう

そんなこと考えてて

目がさめてもしばらくの間

なにから調べたらいいか、とか

この世の広さに圧倒されていたんだ





自由詩 日かげから日なたへ Copyright 遙洋 2016-03-06 21:58:28
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