偽りの葬列
西天 龍

断層崖の途中に隠された極小の神殿から、毎夜偽りの葬列がでるという。
冬晴れの真空に覆い尽くされたまごころの残骸を、舌舐めずりしていた卓越風の予報が、無人の汽車のベルを鳴らす。
「鳳輦は何処へ行った」と胴体だけになった法悦が、虚ろな目で執政官を刺し続けていたが、貧弱な供養が功を奏して無事時代をやり過ごすことができた。

思えば監禁された船出に、胸ときめかせた時代があった。
薄明の暴風雨に木香を託したはずが、網に掛かったのは得体の知れない粘液の塊だった。
いずれお前にも分かるのだろう、褶曲山脈の優しさが。だからその鞍部を越えた亡霊は誰一人としてありもしない国府に異を唱える事は無かった。

偽りの葬列が徘徊する闇を白夜だ、と人は言うが、実は朝を殺した。切り裂くような甘美な絶望のカマイタチに昨日が舌舐めずりをしているだろう。親指をかくしたままで。


自由詩 偽りの葬列 Copyright 西天 龍 2016-03-02 23:31:49
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